卒業生の声
第1期生(2024年6月卒業)
第2期生(2025年6月卒業)
宮澤 弘嗣さん

「自分の人生を他人に委ねるな」
40代・元会社員が、紀の川アグリカレッジで“いちご一択”の幸せを掴むまで
紹介
出身地:和歌山県
前職:会社員
家族構成:単身
研修開始時の年齢:40代
栽培方式:高設栽培
栽培面積:8a
投資額:3,200万円
祖父が所有していた農地を活用し、農業に挑戦したいと考えていた宮澤さん。その思いを決定づけたのが、ベテラン農家のもとで味わった和歌山県のブランドいちご「まりひめ」との出会いでした。そのおいしさに感動し、いちご農家を志した宮澤さんは、紀の川アグリカレッジで栽培技術や経営を学び、独立就農を実現しました。
脱サラ、そして「まりひめ」が見せてくれた一筋の光

愛知県で20年間自動車関連会社に勤務していた宮澤さんは、退職後、祖父が所有していた貴志川町の農地を活用しようと考えました。かつては柑橘畑として使われていましたが、祖父の引退後は家族で草刈りを続けるだけで、栽培は行われていませんでした。この農地をもう一度生かし、新たに農業へ挑戦しようと思ったといいます。
農地は約2反(20a)しかなく、米やみかんでは十分な収入を得るのは難しいと考え、限られた面積でも収益を確保しやすい施設栽培の品目を探したのです。
インターネットで調べると、トマトやいちごなどが候補として上がってきましたが、宮澤さんはトマトが苦手でした。
「自分で味見もしたくないものは作りたくないと思いました」
「まりひめ」のおいしさに驚き、自分の手でつくろうと決心
トマトを候補から外したことで、自然といちごに気持ちが傾いていきました。そんなとき、転機となる出会いが訪れます。
地元の農家に相談して回るなかで、ベテランのいちご農家を紹介してもらい、ほ場を見学する機会を得ました。そこで和歌山県のブランドいちご「まりひめ」を試食した宮澤さんは、そのおいしさに驚きます。
「いちごってこんなにおいしいものなんだ、と感動しました」
ベテラン農家の「いちご栽培はほかの作物に比べて収益がよい」との言葉も後押しとなり、「まりひめを自分の手で育てたい」と心が燃え上がるのを感じたのだといいます。
「和歌山 いちご」で検索すると紀の川アグリカレッジが表示されました。県内の農業研修とも比較してみましたが、紀の川アグリカレッジは研修から独立までのサポートが圧倒的に手厚く、いちご農家になるなら紀の川アグリカレッジ一択だという結論になりました。
徹底的な計算をして選んだ多段式高設栽培

計画に落とし穴!
紀の川アグリカレッジで過ごす時間は、研修を受けるだけでなく、就農のための準備期間でもあります。
宮澤さんは、紀の川アグリカレッジで経営を学び、1反(10a)のハウスでやっていこうと決め、新たな土地も手に入れました。ところが、そこで計算の落とし穴に気づきます。
「1反あったら1反のハウスが建てられるのだと思っていたのですが、実際には1反の土地に建てられるハウスは8aなんです。育苗ハウスも別途必要ですし、栽培に使えるのは8aだけだということに気がつきました」
メーカーの話を聞き、多段式高設で栽培する農家へ見学に
どうしようかと考えていた時、紀の川アグリカレッジで開かれた農業設備、機材のメーカーを集めた説明会で解決の糸口を見つけます。
高設栽培は通常1段の高設ベンチを使いますが、上下に2段の多段式高設ベンチ(上下2段に栽培ベッドを設置し、限られた面積でも多くの株を植えられる栽培設備)があることを知りました。メーカーの説明によると、多段式高設ベンチなら8aのハウスでも10a(1反)分の収益を目指せることがわかったからです。
「農家さんの生の声を聞いて、狭いほ場では多段式の高設栽培にメリットがあると感じ、これでやっていこうと思いました」
ただ、その設備が良さそうだと思ったものの、珍しい設備のため周りに使用している人がおらず、自分の目で確認したいと考え営業担当者に相談しました。兵庫県で高設栽培を実施している農家を紹介してもらい、実際に3軒訪れることができました。
見学させてもらった農家から詳しく、率直な感想を聞くことができました。多段式はいいことばかりではありません。下の段が低いため、中腰での作業になってしまうことと、2段あることで農薬の散布に手間がかかることがデメリットになります。
「ほ場に十分な広さがあるなら1段式が良いと農家さんも言っており、見学したことで全て納得した上で導入する決断ができました。」
休み、睡眠。人件費を削った1年目。それでも「苗」が愛おしい

初期投資がかかった分、必死に働くことで補う
大きく投資した初期費用をなるべく早く取り返したいと思いました。そのため、人を雇わず一人で作業することを選択。休みや睡眠時間を削りながら、人件費を抑えて栽培に取り組みました。
また、栽培管理は紀の川アグリカレッジの研修先の農家である師匠に教わった施肥設計を忠実に実践したといいます。自己流で失敗すると原因が分からなくなるためです。
現役農家の教えはインターネットでは得られない
研修先の農家の働きぶりは、宮澤さんにとってまさにスーパーマンのように映ったそうです。
「春はいちご、夏は米ともも、冬はみかんを栽培していて、いちごが終われば次はももというように、一年中どこかのほ場で仕事をされていました。私が朝7時に研修へ行くと、師匠はすでに働いているんです」
今ではインターネットで栽培方法を調べることもできます。しかし、現役農家から直接学んだからこそ得られた気づきもあったといいます。
「いちばん大事なのは苗をよく観察することだと教わりました。毎日見ていると、水を欲しがっているのか、調子を崩しているのかが少しずつ分かるようになるんです」
農業は大変な仕事です。それでも、言葉の通じない苗とも心を通わせて大切に育てることに、幸せと充足感があるのだと宮澤さんは思っています。
「いちご一本」に人生のすべてを賭ける

いちご栽培は大変だからこそ集中する
宮澤さんは、これからもいちご一本にしぼって農業を続けていくつもりです。周りからは、失敗したときのために別の作物も育てたほうがいいとアドバイスされました。けれども、宮澤さんはそうしませんでした。
「いちごの栽培は難しいです。だからこそ、100%いちごに集中しないと、失敗のリスクの方が高いと考えているんです」
覚悟を決めて取り組めば、相応しい喜びを手に入れられる
紀の川アグリカレッジの見学会で、「農業で食べていけますか?」「体力に自信がないのですが大丈夫でしょうか?」といった質問を受けることがあるという宮澤さん。
「やれるかやれないかではなく、やるんだという気持ちが大事だと思います。人からやれると言われたからやる、無理だと言われたからあきらめる、そんなふうに他人に自分の人生を委ねていいんでしょうか?」
農業は、人生であと何回立てるか分からない「打席」
就農して1年。量より質を追求しながら、よりおいしいいちごづくりに挑戦している宮澤さん。
「全国いちご選手権での入賞を目標に、さらに品質を高めていきたいと思っています」
誰に言われたからでもない、自ら「やるんだ」と決めて動きはじめた新しい人生。
自然に囲まれて働く、何にも代えがたい幸せは自分で人生のハンドルを握ったときに得られる…宮澤さんは、そう実感しています。
「農業は1年に1回しか経験できません。野球で例えるなら、40歳の僕ならあと20~30回しか打席に立てません。20歳の人でも60回。1回ごとの打席は貴重です。『いつかやろう』という気持ちがあるなら、紀の川アグリカレッジの視察会に行って、農業に触れてみてください」