卒業生の声
第1期生(2024年6月卒業)
第2期生(2025年6月卒業)
Aさん

「やらない後悔をしたくない」あなたへ。
紀の川アグリカレッジで叶える、失敗しないスマート農業への第一歩
紹介
出身地:和歌山県
性別:女性
栽培方式:高設栽培
栽培面積:8.2a、育苗ハウス3a
投資額:約3,200万円(借入1,900万円、補助金1,300万円)
農業は体力勝負というイメージを持たれがちですが、栽培方法や設備の選び方によって、作業負担を軽減することができます。Aさんも、将来を見据えて必要な設備を導入し、効率よく作業できる環境を整えながら、いちご栽培に取り組む一人です。設備投資は、省力化や効率化を図るだけでなく、スマート農業の実践にもつながります。
「収入、なんとかなる?」未経験からのスタートとリアルな葛藤

農地の相続が就農のきっかけに
「就農の動機が、ほかの方とは違って特殊な例だとは思うのですが……」そう話し始めたAさん。大阪で働いていたときに、和歌山県紀の川市にある父の実家の農地を相続したことが、就農を考えるきっかけになりました。
定期的に草刈りだけはしていましたが、税金を払い、草刈りのためだけに大阪と紀の川を往復するのは無駄なので、きちんと農地として活用するべきなのでは、という思いがありました。
稲作や露地野菜で生計を立てられるほどの広さではなかったため、狭い面積でできる作物をインターネットで調べたところ、トマトが候補として挙げられていました。
ただ、トマトを育てたいという気持ちになれなかったため、さらに調べてみると、いちごは単価が高く、広い農地がなくても十分な収益が期待できることを知りました。
紀の川アグリカレッジは自分に合っていた
紀の川市でいちごを作ろうと決めたものの、農業については何の知識もありません。どこで学べばいいのか、どう準備していけばいいのか、情報を集めていたところ、紀の川アグリカレッジの1期生募集のことを知ったのです。
「これは私のための研修ではないか、と思いました」
でも、仕事を辞めるにもある程度の時間が必要で、1期生の募集には間に合わず、2期生に応募することにしました。
全くの未経験で就農するとなれば、不安を覚える人も少なくありませんが、Aさんは違いました。
紀の川アグリカレッジのホームページに、面積に対する売上高や手取り、経費などの目安が記載されているのを見て、これくらいなら生活できる、と思ったからです。
「あの時、ああしておけばよかった、と思うのが嫌なんです。やらない後悔だけはしたくないと日々思っています。だったら、もうやるしかない、と飛び込むことにしました」
体力不安を解決する「高設栽培×スマート農業」のすすめ
高設栽培は作業の負担軽減や効率化につながる
いちご栽培は、大きく分けて2つの方法があります。1つは地面にいちごを植える「土耕栽培」。もう1つは、腰ぐらいの高さに設置したベッド(高設ベンチ)でいちごを育てる「高設栽培」です。高設栽培では、水に肥料成分を溶かして与える養液栽培が一般的です。
Aさんは高設栽培を選択しました。
「土耕栽培は土づくりにこだわると味が違うとも聞きます。でも、私は男性に比べてやはり体力がないので作業のしやすい高設栽培を選びました」
土耕栽培では、土を運んだり畝を立てたりと、体力を必要とする作業も少なくありません。特に女性一人での就農や、40代以降で農業を始める人にとっては、長期的な視点で作業効率や身体への負担を考えた栽培方法を選ぶことも重要です。
「数年でペイできる」初期投資の考え方
新規就農するには、さまざまな初期費用がかかります。中古で揃えるにしても、耕うん機やトラクターは必要ですし、その他設備も購入しなくてはなりません。
1時間単位の収穫量、作業量は、腰をかがめる必要がない高設栽培のほうが多いので、それを人件費に置き換えて考えると、初期投資が大きくてもどこかのタイミングで回収できると、Aさんは考えています。
「最初に機材をそろえて、作業効率を上げて収量を増やすことで、投資した分を取り返したほうがいいと思います。自己資金もありましたが、機材や設備の多くを融資と補助金で賄いました。融資は無利子なので活用しない手はありません。自己資金は手元に残しています」
温暖化には夜冷庫で対策
Aさんが栽培している和歌山県オリジナル品種のいちご「まりひめ」は、2010年に品種登録されたものです。当時は現在ほど夏の暑さが厳しくなく、育苗や定植のスケジュールに沿って栽培を進めることができましたが、近年は気温の上昇により、花がつく時期が遅れる傾向がみられるといいます。
いちごは、花になる芽をつくる「花芽分化」が気温の低下によって進みます。そのため、気温の高い年は花芽分化が遅れ、収穫時期も後ろにずれてしまいます。
Aさんは、高設ベンチのほか、いちごの苗を冷やす夜冷庫を導入しました。
「夜冷庫に苗を入れることで、冬がきたと勘違いさせるんです。そうすることで、花がつき、早い時期から出荷できるようになります」
Aさんが出荷時期を重視するのには理由があります。いちごは年内の方が高値で取引され、年明けになると価格が下がるためです。
「夜冷庫を活用する方法は、研修先の農家で学びました。年々気温が高くなっていくのは人間の手ではどうにもならないことです。年内出荷と年明け出荷の価格差を考えたら、夜冷庫への投資は数年で取り戻せると思っています」
寝る時間もない?! 就農1年目のリアルな1日
いちごは6月に苗づくりを始め、9月に定植を行った後は毎日株の管理を行い、冬になると収穫が始まります。
「最初にいちごの実がなったときはうれしかったですね」
しかし、その喜びも束の間。毎日収穫作業に追われ、4月になるころにはいちごを見るのも嫌になるほど忙しく、それが5月まで続くといいます。
「朝収穫しても、夕方にはもう赤い実になっていて収穫はエンドレスです」
いちご収穫期は寝る時間を確保するのも難しいほどの忙しさ。
朝6時半に前日収穫したいちごを納品に行き、8時から12時ごろまで収穫をして、その後はパック詰めを行います。量が多い日はそれが終わらず深夜まで作業が及ぶこともあります。
「収穫量が少なくなってくる時期には、株の管理をしなくてはならないので、暇になることはありません」
そんな状況ですが、食事をしっかり摂ることだけは欠かせません。個人経営で農業をする限り、身体は資本なので、食べることをおろそかにして体調を崩すわけにはいかないからです。
計画通りにいかないからこそ活きる紀の川アグリカレッジのコミュニティ
就農当初は失敗もあったものの、課題に気づくことができた
経営開始資金の交付や無利子融資を活用するためには、認定新規就農者になる必要があります。認定を受ける際には、就農後の収量や売上高を見据えた計画を作成します。Aさんの場合、おおむね計画通りに進んでいますが、それでも反省点はあったといいます。
就農直後は苗を数十本枯らしてしまったり、高設ベンチの設置で土や肥料を入れるなどの準備が間に合わず、苗を植える時期が予定より10日ほど遅れたりしたこともありました。
今振り返ると、研修期間中にもっと見学や勉強をしておけばよかったと思うこともあるそうです。病害虫対策や水管理など、改善すべき課題はまだまだたくさんあると話します。
紀の川アグリカレッジは農業人脈を広げる場にもなった
就農後は思い通りにいかないことも多くあります。そんな時に心強かったのが、紀の川アグリカレッジで築いた人とのつながりだったとAさんは話します。
「研修先の農家である師匠は、絶対に間違ったことは言わないという信頼感があり、就農後も師匠の作業や言葉を思い出しながらやっています。わからないことがあればいつでも相談に乗ってくれます。
先輩たちは、師匠よりも身近な存在で、失敗したことなども気軽に相談ができ、1人で抱え込んで悩んでしまうことがなく助かっています」
「現地視察会」でリアルな一歩を踏み出そう
全く異なる分野から、農業の道に進むのは簡単ではありません。だからこそ、紀の川アグリカレッジでの2年間の研修を通じて栽培技術や経営の基礎を学びながら、自分に合った就農スタイルを考えることが大切です。
「まずは、現地視察会に参加して、先輩農家のリアルな声を聞いてみるといいのではないでしょうか。経営スタイルや栽培方法、味へのこだわりなど、農家によって考え方はさまざまです。10月に開催される2泊3日のコースでは、よりいろいろな話を聞けると思います」
現地視察会は、研修先となる農家や経営方法の違いを知る貴重な機会です。自分に合った学びの場を見つけるためにも、まずは現場の声にふれてみてはいかがでしょうか。